精子選別による顕微授精でご出産に至ったケース
レディースクリニックでのART(生殖補助医療)で流産をくり返していたが、当院で選別精子を使用した結果、妊娠に至ったケースが出ています。非常に厳しいケースで9件の妊娠が確認できています。
当クリニックでは、これまで何度も顕微授精を行ったが、なかなか妊娠まで至らないカップル等を中心に、提携レディースクリニックと連携して、独自の手法を用いた選別精子を活用した治療を行っています。2018年1月30日時点で、極めて厳しいケースがほとんどですが、54名のうち9名の妊娠例が出ています。
その中から、ご本人から掲載の許可をいただいた診療事例をご紹介いたします。
目次
精子選別による顕微授精
2018年9月来院。
夫40代後半、妻30代後半。不妊期間4年。2010年にレディースクリニックにて顕微受精(ICSI)を3回行うも流産してしまい出産に至らず。過去の精液検査で乏精子症を指摘されている。レディースクリニックでは初期流産の原因の一つとして精子のDNA断裂の可能性を指摘されていた。
エス・セットクリニックでの良好精子選別を希望されご来院。
高精度精子検査Bコースと男性不妊一般検査を受診
2週間後結果再診。
源精液では総精子数3500万匹、運動率35%とやや不良な所見。選別後では、総精子数100万匹、運動率45%の結果。
選別後のDNA2重錯切断陰性率は良好であったものの、先体反応誘起能、ミトコンドリア形態検査の結果は不良、耐凍性能は0%の結果であり、現時点では当院の選別精子を用いたICSIが適当と考えられた。
精巣超音波検査では異常は認められず、ホルモン検査も概ね良好な結果であったため、抗酸化サプリメントと漢方を服用しながら提携病院にてICSIを実施していく方針となった。
2019年3月エス・セットクリニックで選別した精子による顕微授精を実施
エス・セットの選別後の所見は総精子数120万匹、運動率55%と検査時より改善が認められていた。
顕微授精では、採卵5個、受精卵4個の結果となった。胚盤胞を2個凍結して、1回目の凍結融解胚移植にて妊娠成立したとのご報告をいただいた。
2020年5月出産
元気な男の子をご出産
エス・セットクリニック男性不妊専門医が考える今回の治療のポイント
- 顕微授精前に高度精子検査を実施することで、顕微授精をするにあたり事前に勝ち目があるかを精査
高度生殖補助医療特に顕微授精では、1匹の精子を選んで使います。ここで重要なのは動いている精子=妊娠できる水準の精子ではないということです。動いている精子の中にもDNAに傷がついていたりといった異常を抱えていることが多々あります。
高度生殖補助医療に進む前に、妊娠に寄与できる品質の精子が確保できるのか?を調べて勝算があることが確認できてから治療にのぞむことが重要です。
仮に現時点で良好な精子を確保できる状態ではないと考えられる場合は、薬物療法又は必要に応じて手術療法を実施して、可能な限り男性の精子の状態を改善させてから治療に進むことが望ましいです。
- 不妊治療のリスクを下げるための『精子の選別』
エス・セットクリニックの精子選別では、精液を密度勾配担体に層積、遠心分離、沈澱した精子を回収し、沈降平衡法、沈降速度差遠心分離法などを組み合わせたエス・セットクリニック独自の技術・ノウハウによる工程を経て、精漿、ウィルス、細菌等を除去します。そのようにして、成熟した運動精子を濃縮します。この過程でDNA損傷精子の排除も行います。
このような工程で分離して選抜した高品質な精子を高度生殖補助医療に供します。
DNAが損傷した精子は受精に不利に働くことがわかっているため、DNA損傷のない精子を選ぶことが不妊治療を非常に重要になります。
※サプリメント・治療の効果等は個人によって異なります