射精と勃起について(勃起と射精のメカニズム)
勃起、射精についてお悩みの方がたくさんいらっしゃると思います。勃起の問題、射精の問題ともに男性にとって深刻な悩みです。一般的に射精障害や勃起障害は高齢の方のみの問題と思われがちですが、最近では20代~40代の方が勃起障害、射精障害のご相談で来院されることが非常に多くなりました。
勃起の問題と、射精の問題は原因がまったく異なります。また、個人の状況によっても異なりますので、これをすれば治るといった決まった治療法はありません。
ここでは、勃起と射精の違いについて説明をしていきます。性行為がうまくいかないときご自身の勃起に問題があるのか?射精に問題があるのか?を知る参考にしていただければと思います。
目次
射精(ejaculation)とはなにか?
「射精」とは、尿道から精液が放出される現象です。マスターベーションや性行為でペニスに直接刺激を与えることでおこります。通常10歳~18歳頃の間に初めての射精(精通)が起こります。ペニスに直接的な刺激が無い場合でも、夢で性的な興奮をして射精すること(夢精)もあります。
精液(semen)とは?
精液とは、精子と精漿から成り立っています。正常な状態では乳白色をしています。WHOの基準では1.4ml以上とされています。
精漿の3割程度は前立腺の分泌液で7割程度は精嚢からの分泌液です。大変意外ですが、精液のうち精子が占める割合は1%程度です。
精子の大きさは0.06mm程度で、検査をするために通常200倍以上の顕微鏡での観察が必要になります。肉眼では精子の姿はわかりません。
射精のメカニズム
射精は内尿道口(尿道の膀胱側の末端)の閉鎖、液体成分と精子の混合、精阜(精丘)の射精口からの発射というおよび体外への精液の排出というプロセスが連続的に起こる現象です。
射精は大きく分けて2つのステップで起こります。
①精液が作られて尿道に送り出される。(emission)
性的な刺激を受けると精子は精管→射精管へと送り出されます。射精管で、精子は「精嚢(せいのう)」からの分泌液と混ざり合い、その後、前立腺に送られて前立腺液とも混ざり合います。こうして出来上がるのが精液です。
②精液が尿道から体外に放出される(ejection)
性的興奮が頂点(オーガズム)に達すると、精液は尿道から体外に放出されます。
一度の射精で体外に放出される精液はおおむね1.5ml~4.0ml程度です。精子の数は正常男性であれば約1億~4億匹程度と言われています。精子は空気に触れると数時間程度で死んでしまいますが、女性の子宮内では2日~3日程度は生存します。
勃起のメカニズム
勃起のメカニズムには、主に『脳』『脊髄』『陰茎海綿体』が関係しています。
➀非勃起時
非勃起時には、陰茎海綿体、陰茎内動脈はちぢんでおり、海綿体へほとんど血液は流れ込んでいません。
➁勃起時
性的刺激により勃起時には、陰茎海綿体、血管壁がゆるみ、陰茎内動脈から海綿体に血液の流れ込みが生じる。次第に海綿体は血液で満たされ、拡張します。海綿体の容積の増加に伴い白膜(陰茎の外壁にあたる結合組織)下の静脈が圧迫されて血液の流出が制限されます(流入した血液の出口が閉じる。)
③完全勃起
陰茎が血液で充填された状態となり、勃起が完了します。
④勃起の消失
勃起の消失は平滑筋収縮でおこります。動脈の収縮は海綿体洞への血液の流入を低下させます。海綿体平滑筋の収縮により海綿体容積は収縮し、静脈の閉塞が解除され血液は流出し陰茎は弛緩します。
勃起は➁~③のステップで生じます。陰茎に十分な血液が流入しない、陰茎から血液の流出してしまう等陰茎に血液が十分に充填されない状態になると、勃起が満足に出来ない状態になります。
勃起と射精の違い
以上のように勃起は海綿体に血液が流入してペニスに血液が充填された状態です。挿入のしやすさをつかさどる現象です。一方射精は自律神経がからんだ射精システムによる精液の射出です。勃起と射精は連動しておこるものの、別のメカニズムなのです。
よって、勃起に問題は無いものの射精がうまくいかない。射精は出来るものの勃起が十分に継続しないのように片方に問題が無くてももう片方に問題があるといったことが起こります。