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男性不妊の最大の原因となっているのが、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)です。
実は男性不妊の約40%が、精索静脈瘤が原因と言われています。2人目不妊の方も調べてみると悪化した精索静脈瘤が原因の事が多いようです。
精索静脈瘤とは、精巣から心臓にもどる静脈である蔓状静脈叢(つるじょう じょうみゃくそう)内の血液が逆流してしまい精巣の周りに静脈のこぶができてしまう状態を言います。不妊とは関係なく健常な男性のうち15%程度は精索静脈瘤があると言われています
精索静脈瘤になると、お腹から逆流したあたたかい血液がとどまって、精巣の温度を上げてしまいます。 熱に弱い精子にとっては、最悪の環境になります。
精索静脈瘤は、よほどひどくならないかぎり、痛みなどの目立った症状がない場合が多く、自覚症状が無いことがほとんどです。
自覚症状がある場合、陰嚢部(いんのうぶ)の重圧感、不快などがあります。陰嚢の上の方で、蔓状静脈叢(つるじょうせいみゃくそう)がミミズ腫れ・鬱血(うっけつ)するなどの症状が見られます。
不妊治療をしていても、なかなか子供ができない。二人目の子供ができない。顕微授精を何度してもダメだった。このような場合には、一度精索静脈瘤がないかを疑ってみましょう。
顕微授精等の一回50万円以上するような治療を何度もうまくいかなかった方でも、調べてみたら重症な精索静脈瘤があったというケースがよくみうけられます。
検査や治療で痛い思いをする奥さんのことを考えると、できるだけ不妊治療を始める前に調べることをお勧めします。
精索静脈瘤の原因とは何でしょうか?
精索静脈瘤は睾丸(こうがん)から「腎静脈」へと向かう精索静脈の血液のめぐりに問題があり、静脈内の血液が逆流してしまうことが主な原因のひとつです。
血液は逆流をしないために、「弁(べん)」と呼ばれる機能があります。
この弁が、加齢などの理由で、機能が低下してしまうことがあります。すると血液が逆流を起こすことがあります。
睾丸には「精索」という血液の束があります。血液が逆流してしまうと、精索に「こぶ」ができてしまう事があります。このこぶがあると、お腹などであたためられた血液が精巣に逆流して、精巣の温度が高くなってしまうのです。
精子は熱に弱く、精巣が温められてしまうと、精子を作る機能が大幅に低下してしまうのです。精巣は、約32~34℃に保たれるようになっています。体温よりも2~3℃ほど低い温度が良いとされています。精索静脈瘤により、精巣が温められてしまうと、精巣の温度が体温と同じ約36~37℃になってしまいます。
精子は高温に弱いので、37℃に近くなると機能不全になり、精子がうまく作られなくなります。この高温状態が長く続くと、乏精子症や精子無力症といった症状につながってしまうのです。
精索静脈瘤は、程度によってグレード1~3に分類されます。グレードが高いほど、症状が重く、場合によっては手術などが必要になります。
グレード1 | 立位腹圧負荷で触り、確認できる |
グレード2 | 立った状態でさわり、確認ができる |
グレード3 | 視診で静脈瘤を確認できる |
グレード2以上になると、精巣における血液逆流の状況にもよりますが、精子検査の結果次第では、外科手術での治療をすることで、効果があると言われています。
また、触診ではわからず、超音波(エコー)検査で発覚する精索静脈瘤を、サブクリニカルな精索静脈瘤といいます。
精索静脈瘤は、通常「左側」にみられることが圧倒的に多いです。
精索静脈瘤のグレード(重症度)や手術適応の判断は、非常に繊細であり、通常は手術経験が豊富な泌尿器科医師が行います。
検査技師が精巣の超音波を行っている施設があります。精巣の触診も重要ですし、精索静脈瘤の重症なものは手術の判断も必要になりますので、必ず医師が行うべきです。精索静脈瘤の検査は、必ず医師に、それも精巣領域の専門家である、泌尿器科の先生にお願いしましょう。
泌尿器科の先生でも、すべての先生が正確に重症度グレードをつけられるわけではありません。精索静脈瘤と診断されても、重症度に対する説明がない場合もあるようです。触診やエコー検査の仕方にノウハウがあるので、検査件数が豊富な医師に診てもらうのが良いでしょう。
精索静脈瘤のグレードに加えて、ご夫婦の年齢を勘案し、男性ホルモンに関する血液検査の結果と精液所見(精子検査の状態)を総合判断し、手術に踏み切るかどうかを決めることになります。
精索静脈瘤手術の成功経験に裏打ちされた判断になるので、年間100例以上の手術件数があり、しっかりと精子検査ができる施設の泌尿器科医に診てもらうことが大変重要です。
手術をするべきといわれても、納得がいかない場合には、セカンドオピニオンをお願いできる病院に相談してみましょう。また、手術に対し恐怖感がある場合には、その不安を打ち明け、解消してくれる先生にお願いするのが良いでしょう。
人生に一度するかしないかの手術ですから、できるだけ自分にとってベストと思えるやり方を選択することが重要です。
システムエンジニアやプログラマー等、仕事柄、長い時間、座っている人は注意が必要です。椅子に長い時間座っていると、精巣が長時間、あたためられてしまいます。熱がこもり、精巣を温めてしまうわけです。
精巣は熱に弱いので、長時間の座位が日常化すると、精子を作る機能が低下する可能性があります。
定期的に休憩をとり、一時間に一度はかならず立ち上がって、精巣をブランブランと解放させましょう。
精巣の鬱血(血がたまった状態)を解消させてください。
さらに、自転車に乗る習慣がある方も、精巣にとってはよくありません。長時間の圧迫や摩擦などには、注意が必要です。精巣は熱に弱い・・・という事実を覚えておくようにしましょう。どうしても自転車に乗りたい方は、妊活中は、ロードレーサーなどのサドルが細いものよりも、ママチャリのようなサドルが分厚いものを選ぶことをお勧めします。
痛みが少なく、自分では気がつきづらい、精索静脈瘤の症状ですが、ではどのように、自分でチェックしたらいいのでしょうか?
・陰嚢(いんのう)サイズに左右差がある。(左が小さい)
・陰嚢の表面にしわがより、でこぼこしているような気がする
・立ち上がった時に、たまに痛みを感じる
・陰嚢の表面触るとぶよぶよとしたこぶのようなものを感じる(かなりの重症の場合があります。)
精索静脈瘤がひどくなると、ミミズのようなものが陰嚢(いんのう)部分に見られるようになります。目で見てわかる場合は、かなり症状が進行している可能性があります。
このような状態が続いている場合、男性不妊の専門医の受診をするべきです。
二人目の子供がなかなかできない。レディースクリニックで調べてみたら、精子の状態があまり良くない。
そんなときは精索静脈瘤を疑ってみましょう。
知らず知らずのうちに、精索静脈瘤が悪化していて、2人目の子供ができないご夫婦が良くおられます。
一人目の時は「精索静脈瘤」による悪影響がまだ少なかったため運よく妊娠できた方が、そのまま放置したため、数年後には重度な精索静脈瘤になってしまい、精液所見が悪化して2人目ができない・・・という事例が多くあります。
研究報告によると、重度(グレード3)の精索静脈瘤を5年放置すると、正常だった精液所見が顕微授精が必要な500万匹/ml以下の水準にまで悪化するという報告があります。
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)の治療は、グレード(1~3、3が最も重症)によって変わってきます。グレード1(軽症)の場合は、さほど気にすることはないようですが、それでも精子には悪影響を及ぼす可能性があるという報告があります。
少しでも精子の質をよくしたいということであれば、サプリメントや血流を良くする漢方による薬物療法がお勧めです。最近では、漢方よりもサプリメントの方が良いデータがでているようです。エス・セットクリニックでは、AQ10(エーキューテン)等の高濃度CoQ10(コエンザイムQ10)含有のサプリメントを処方しています。
グレードが2以上になると、逆流の程度や精巣の状態、精子検査の結果によっては、外科手術をすすめることがあります。
自分で判断ができればよいのですが、医師の診断が必要な場合がほとんどです。特に熟練された男性不妊を専門とする医師にしっかり診断してもらい、手術を受けるかどうかを検討しましょう。
精索静脈瘤のグレードが3(重症)の場合は、ご夫婦の年齢が若かったり、精子検査の結果が非常に良くない限りは、できるだけ外科手術をすることを勧められることが多くなります。
状況によって、治療方法は変わるので、専門の医師に診断してもらうことがよいと思います。
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)の治療をした場合、治療を受けてから精液所見の改善がみられるまで半年以上かかることがあります。
不妊治療をする前に、特に高額な治療である、体外受精、人工授精の前に必ず考えておきたい治療の一つと言えます。
精索静脈瘤の治療金額は、手術の種類によって違ってきます。日帰り手術と2~3日、腹腔鏡手術では約一週間程度の入院による手術などがあります。
手術の方法によって保険が適用される場合と適用されない場合があります。代表的な手術は下記の3つです。
血管を処理する位置が高いのか、低いのか?によって違ってきます。
●高位結紮術(せいさくじょうみゃくりゅう こういけっさつじゅつ)
へそ脇あたりの腹部の切開します。腎臓に近いほうの精巣静脈を縛る方法です。リスクとしては、精巣水瘤や再発のリスクなどが低位に比べて10倍以上発生する報告があります。全身麻酔で、2~3日間の入院で手術を受けることができます。
手術の難易度はそれほど高くなく、治療は8~18万円前後になります(病院によって違います)。低位結紮術に比べて、傷が倍くらい大きくなる、筋膜を切ったりするので術後の痛みが大きい等がデメリットになるかもしれません。
ただし、再発率も15%程度と高いことから、手術を低位結紮術でやり直すことになり、結局割高になるケースもあるので施設の手術実績を確認してください。
●低位結紮術(せいさくじょうみゃくりゅう ていいけっさつじゅつ )
そけい部(足の付け根あたり)のを小さく切開して精巣に近い静脈を縛る方法です。骨盤から出てきた静脈の部分を遮断します。リンパ管の温存ができ、術後に陰嚢水腫の発生率をほとんど無くす事ができます。再発率も熟練した医師が手術を行えば、ほとんどありません。
低位とは、精索静脈瘤を結紮する位置が低いという事です。足の付け根に近い部分の手術を行います。
精巣に近いため、細い血管がたくさんあり、動脈やリンパ管を一本づつ温存して、静脈を結紮するには、手術用顕微鏡や、ドップラーエコーを使用しなければなりません。(ここまで丁寧に手術を行っている施設は実際はほとんどありません。)
手術は1時間から1時間半程度の非常に大変な作業になりますが、静脈のしばり残しが少なく、治療効果も高く、患者さんにとってメリットの多い治療になります。手術費用は、高度な精密機器を使用するため、25~40万円になります。
施設によってはまとめて縛ってしまう医療機関もあります。15分程度で手術を済ませる施設もありますが、あまりにも手術時間が短い施設については、注意が必要です。
術後の痛みが少なく、傷も約2センチ程度と小さくでき、合併症が少ない点も高位結紮術に比べて優れた治療といえるかもしれません。
●腹腔鏡下精索静脈瘤手術(ふくくうきょうか せいさくじょうみゃくりゅう )
腹腔鏡を使って、腹部またはそけい部の精巣静脈を縛る方法です。腹腔鏡手術とは、お腹の周辺から直径2~10mmの内視鏡を腹腔内に挿入します。テレビモニター上に映し出された映像を見ながら手術を行う新しい術式です。腹腔鏡手術は今までの手術よりも皮膚を切る面積が少なくて済みます。さらに回復が早く、入院する日数が減ります。
腹腔教手術は、開腹手術に比べて、高い技術が必要です。経験の少ない医師が担当すると、重篤な副作用が起こるリスクもあり、非常に高度な技術を持つ医師が執刀することになります。
精索静脈瘤の治療に、このような術式を採用することはほとんどありませんが、一部の大学病院では実施されています。
エス・セットクリニックでは、精索静脈瘤の手術では第一選択である、低位結紮術を実施しています。手術経験豊富な医師が基本的に2名で、動脈を目視とドップラーエコーで確認しあいながら残して、動脈にくっついた静脈なども含めて、丁寧かつ確実に結紮しています。リンパ管もできる限り残していきますので、陰嚢水腫等の副作用や、再発のリスクをかなり低く抑えることができる術式になります。一年間の精索静脈瘤手術件数は約140件と日本有数の症例数を扱う施設になりました。
また、手術を単独でおこなうのではなく、術前、術後に高精度精子検査をおこない、精子の実力の変化を明確に把握することで治療効果があったかどうかも明確になります。また術後3か月、6か月で精子の状態からご夫婦が選択すべき不妊治療について、納得がいく判断ができます
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)の治療を受けた後、精子の質が改善するという期待がもてます。治療を受けた後は、なるべく精子の精密検査を受けた方がよいかもしれません。
高精度な精子の検査(精子のDNA損傷率、卵への突入能力他)を手術前後ですると、より詳しく精子の改善状態を知ることができます。手術を受ける前と、受けた後で正確なデータなどがあると、顕微授精や体外受精での妊娠の確率などがより予測しやすくなってきます。
精子の質がDNAレベルで改善していることが確認できた場合には、手術前にうまくいかなかった体外受精にも自信を持って臨むことができるのです。
精索静脈瘤は放置すると、男性不妊の原因となってしまいます。また男性ホルモンの低下が進んでしまい、男性の更年期障害になってしまうという報告もあるようです。
命に支障があるようなの疾患ではないですが、早めに検査しておいた方が安心です。悪化するかしないか?については個人差があります。
子供がいらないのであれば、そのまま放置しても問題はないですが、やはり不妊治療をする方ならば、早めの対策が必要であると思います。
精索静脈瘤についてはいかがでしたか?精索静脈瘤は男性不妊の大きな原因となっています。さらに、自覚症状が少なく、自分では気が付かない人が多いので、つい見過ごしてしまいがちです。
体外受精や顕微授精をする場合は、その高額な治療費を出す前に、「まず、精索静脈瘤を疑う」という事が何よりも大切です。
10回以上も顕微授精を行ったご夫婦が、エス・セットクリニックに来られて、調べてみると精索静脈瘤が見つかり、手術をして半年後に自然妊娠をしたというケースがあります。
治療の成功率を高め、安全な出産をするためには、男性不妊の原因についても、より詳しく知っていただけたら嬉しく思っています。