精索静脈瘤の治療
こちらでは精索静脈瘤の診断方法、治療方法、当院独自の治療プロセスについて紹介させていただきます。
目次
精索静脈瘤とは
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう、Varicocele)は、男性不妊患者の約4割に認められるともいわれ、男性不妊の原因の代表的なものの一つです。
これは、簡単にいうと睾丸(精巣)周辺の血管のネットワーク異常で、血液がスムーズに流れることができなくなるもので、これにより睾丸の温度は上昇し、精子の状態に重大な悪影響を与えます。
治療は、程度によって漢方薬などによる薬物療法から外科的手術などの方法があり、これらの治療により改善するケースが多くみられます。
精索静脈瘤の症状
精索静脈瘤は、程度によってグレード1~3に分類されます。また、触診ではわからず、超音波(エコー)検査で発覚する精索静脈瘤を、サブクリニカルな精索静脈瘤といいます。
症状としては、多くの場合が無自覚ですが、程度が重くなると陰のう部に不快感や痛みを感じることがあります。
また、目で見える症状としては、陰のう上部にある蔓状静脈叢がうっ血してしまうことにより、陰のう表面にこぶ(瘤)状に静脈がみえることがあります。精巣の静脈は左右で違いがあり、通常左側にみられることが多いとされています。
目で見えるようなひどい精索静脈瘤の場合には、精巣や精子に及ぼす悪影響はもはや深刻なレベルとなることがあります。グレードの高い静脈瘤などは、お風呂上がりなど陰嚢の皮膚がたるんでいるときに自分でも分かることがありますので、是非自分でチェックしてみることをお勧めします。
精索静脈瘤の原因
動脈は心臓から出ていく血管のことで、静脈は心臓へ戻る血管のことです。
動脈は、心臓から出てきた血液が勢いよく流れていきますが、静脈は心臓に戻る血液の通り道であるため、血液の圧力が低く逆流を起こしやすいという性質があります。そのため、静脈には逆流を防ぐための弁がついているのですが、その弁に不具合が生じてしまったとき、血液の逆流が生じてしまいます。そうすると、陰のう上部がうっ血し、こぶ(瘤)状の腫れなどの症状が生じることになります。

男性不妊との関連
程度の軽い精索静脈瘤であれば、痛みや違和感を自覚することもないため、日常生活を送る上では何らの問題もないといえます。しかし、精子に対しては悪影響を与えていることが多くの臨床データより明らかになっています。
精索静脈瘤がある場合、本来血液が流れるべき方向へスムーズに流れておらず逆流している状態です。したがって、血液が停滞し、その結果として精巣の温度が上がってしまいます。
精子にとっての適温は32~35度程度といわれており、そのために精巣は人間の体の内部(平熱は37度以上)ではなく、外側に位置しており、また、陰のうの表皮の伸び縮みにより温度調節ができるようになっているのです。
しかし、精索静脈瘤がある場合、血流が滞ることにより精巣の温度が上昇し、精子にとっての適温である32~35度程度の範囲を大きく超えてしまいます。この場合、いわば常に精巣を温めているような状態であり、精巣機能を著しく低下させてしまいます。
また近年、精索静脈瘤の有無とテストステロン(男性ホルモン)に相関があるとの研究報告もなされています。精索静脈瘤から起因する男性ホルモンの低下により、男性更年期障害の原因になってしまうことがあるようです。
検査及び診断方法
精索静脈瘤の検査及び診断
- 視診
陰のう上部にこぶ(瘤)状の腫れがないかを観察します
- 触診
立位で腹圧がかかるようにして頂き、陰のう上部の静脈の逆流が起こって腫れたり、うっ血したりしていないか、また、押さえた際に痛みがないかを確認します。静脈瘤は、その程度により、グレード1~3までに分類されます。この診断はとても重要ですが、熟練した医師陣でも判断に誤差が生じることがあるくらいデリケートな分類であり、手術の際には再度チェックすることもあります。
- 超音波(エコー)検査
精巣の大きさや血液の逆流の有無を確認します。視診や触診で確認できないものも、この検査でより正確に把握することが可能です。この検査は、検査技師が行う施設もありますが、当クリニックは必ず泌尿器科医師が行います。
検査費用
初診時費用
初診セット (基本精子検査+男性不妊一般検査) | 44,000円 |
---|
男性不妊一般検査のみ (視診・触診・超音波検査により精索静脈瘤の有無を検査する他、尿検査及び血液検査により異常の有無を検査します。精子検査は含まれません) | 33,000円 |
---|
ご不明な点がございましたらお気軽にお問合せください。
精索静脈瘤の治療方法
大きく分けて、薬物療法と手術の2つの手段があります
軽度(グレード1~2)の精索静脈瘤の場合、漢方薬(桂枝茯苓丸)やサプリメント(AQ10)を服用することにより精液所見が改善することがあります。薬物療法による治療をするかどうかの判断は、ご夫婦の年齢と超音波検査での静脈瘤の重症度(逆流の程度等)によって慎重に行います。
薬物療法
漢方薬と併用して、コエンザイムQ10等のサプリメントを補助的に併用します。当クリニックでは、数年間、様々なサプリメントの比較試験した結果、還元型コエンザイムQ10が高含有されたAQ10(エーキューテン)を採用しています。
中程度(グレード2)で漢方薬やサプリメントの服用により精液所見が改善しない場合や、重度(グレード3)の精索静脈瘤の場合、手術と薬物療法の併用治療を行います。ただし配偶者の年齢(40代前半)により、術後効果があらわれるまでの時間を待てない場合には、選別精子を用いて体外受精や顕微授精を実施する、“同時並行”が現実的な選択となります。
※漢方の主な副作用として、発疹、発赤、かゆみ、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などがあります。
費用
院外処方箋料 | 2,200円 |
---|
ご不明な点がございましたらお気軽にお問合せください。
手術
術式により異なりますが、日帰り手術と2泊3日の入院手術があります。腹腔鏡手術では約一週間程度の入院になります。
精索静脈瘤高位結紮術
へそ脇あたりの腹部の切開で、腎臓に近いほうの精巣静脈を縛る方法です。腰椎麻酔か全身麻酔になります。手術は容易といわれていますが、動脈の温存がやや難しく、リンパ管温存も困難な点がデメリットです。疼痛が強いことも患者さんにとって厳しい点です。
副作用は、陰嚢水腫発生率7~8%、静脈瘤の再発率15%前後とやや高めです。
精索静脈瘤低位結紮術
そけい部(足の付け根のあたり)の小切開で精巣に近い方の静脈を縛る方法です。局所麻酔(施設によっては全身麻酔)・日帰り手術。手術は、顕微鏡を用いた超微小手術となる為、難易度が比較的高いが、最新鋭の設備で丁寧な手術を行うことで動脈やリンパ管温存が可能な点がメリットです。静脈を満遍なく結紮する技術力の高い医師が執刀する医療機関を選ぶことが重要となります。疼痛は少なく、傷口も小さいのが患者さんにとって優しい点です。
副作用は、陰嚢水腫発生率0~1%、静脈瘤の再発率0~1%と他の治療に比べて低くなります。
腹腔鏡下精索静脈瘤手術
腹腔鏡を使って、腹部またはそけい部の精巣静脈を縛る方法。全身麻酔・入院1週間めど。腹腔鏡下手術は、両側精索静脈瘤の手術に対して、効率的に治療が行えるため、負担も少なく、有効だと言われています。ただ、高位結紮術と同様に、動脈の温存がやや難しく、リンパ管温存も困難な点がデメリットです。
副作用は、陰嚢水腫発生率3~12%、静脈瘤の再発率4%と低位結紮術に比べて高くなります。
当クリニックの精索静脈瘤手術について
当クリニックの精索静脈瘤手術は、以下の4つの特徴があります
傷口が小さくて済む『低位結紮術』という術式を用います
精索静脈瘤手術の術式は複数存在しますが、当クリニックでは「顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(けんびきょうかせいさくじょうみゃくりゅうていいけっさつじゅつ)」という術式を用います。この術式は、手術による傷口が小さくて2cm程度で済みます(高位だと4cm程度)。また当クリニックでは患者さんに合わせて、局所麻酔を独自のノウハウで使用します。できるだけ少量の麻酔で手術を終わらせるため、回復も早く体への負担を軽減することができます。
気になることがあればお気軽にご相談ください。

手術は日帰り、土曜日に実施
当クリニックでの精索静脈瘤手術は、基本的に2名の医師がお互い確認しあいながら、動脈やリンパ管をしっかり残していきます。動脈に張りついた細かい静脈も、ドップラーエコーで確認しながら、一本一本もれなく静脈を結紮するため、再発のリスクは非常に少なくなります。
片側のみの場合、手術時間は1時間程度の日帰り手術となります。局所麻酔を上手く使うため、体への負担は少なく、手術終了1時間後には歩いて帰宅が可能です。
土曜日に手術を行い、週明けの月曜日から仕事に復帰することが可能です。
手術の後は、通常通りの食事を召し上がっていただけます(当日の飲酒は控えていただきます)。



年間手術件数は130件以上

当クリニックの精索静脈瘤手術件数は、直近の1年間で130件を超えており、国内でも有数の手術件数を誇ります。佐々木医師、安東医師等の泌尿器科医師が執刀します。
最新の医療機器・最良の備品を用いて手術します
効果の高い手術を確実に行う為に、手術用顕微鏡や、血流の確認に用いる超音波血流計等、同手術においてはハイスペックともいえる、最新の医療機器を用意しております。
専用の手術用顕微鏡(カールツァイス)
繊細な手術のための専用顕微鏡を用いて手術を行います。非常に高価な機械ですが、現在では精索静脈瘤手術(顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術)を行うための標準設備と考えられています。
超音波ドップラー血流計(Hadeco)
精巣動脈を可能な限り温存し、安全な執刀をするために、手術には超音波ドップラー血流計を使用します。この機械を用いずに動脈とリンパ管を確実に温存することは非常に困難です。

一生に一度の手術を最善の結果にするために!
エス・セットクリニックは新しい精索静脈瘤治療プロセスを行っています。

- 精索静脈瘤の手術は、効果が現れるまで術後半年~1年程度の時間を要するため、早めの診察及び決断が大切な要素となります。
- 術後再発例には、静脈塞栓術(放射線科で精巣静脈に塞栓物質(血管の中にコイルなどを)を詰める)という方法もあります。