高精度精子検査Bコース
対象:
●顕微授精を何度か失敗していて、精子の質の精査をしたい方
●胚盤胞まで行くがなかなかうまく着床をしなくて困っているご夫婦
●良好精子選別で顕微授精の成功確率を高めたいご夫婦
●先天異常などのリスク回避の観点から顕微授精を可能な限り避けたいご夫婦
Bコースは、16項目を調べる当院の最も詳細な精子検査です。
ART(体外受精、顕微授精)用に選別した精子群を精密検査し、「精子の実力」を十分に把握する検査です。
この検査で得られる精子の詳細情報によって、現状の精子での顕微授精の妊娠成功確率を見極めることができます。選別後の精子の質が良い場合には、安心して顕微授精に進むことができます。またこれまでのデータから、ご夫婦が仮に顕微授精をした場合、複数回失敗するリスクがあるという結果も事前に知ることができます。
当院の良好精子選別(バンキングサービス)をご希望されるご夫婦は、Bコースの受診が必須となります。検査結果が出るのに2週間かかりますので、余裕をもって検査のご予約をお願いします。
※この度3項目の高精度精子検査項目が追加され、7項目の新Bコースが開始いたしました。(予約制です。現在予約が集中しております。すぐに検査ができない場合がありますので、精子選別をご希望で採卵日時が迫っている場合はなるべく早く事務局にご相談ください。)
※2023年5月末まで、通常価格から33,000円引きの特別価格の適応になります。
精子をDNAレベルで解析する最高精度の検査(特許技術:特許番号5760206)を含めた、当院のすべての精子検査項目を行う精密検査です。この検査の目的は、通常の体外受精や顕微授精に使用できるレベルにまで選別した運動精子のDNAが損傷している度合い、頭部の細胞膜の状態、先体反応誘起能等7項目の検査を行い、「精子の実力」を詳細に把握することです。
体外受精や顕微授精への使用に値する良好な精子がどの程度の量確保できるかどうか、またそれらの精子群の質が妊娠可能なレベルにあるかを確認し、現時点での体外受精等の成功率を男性側から評価します。
採精後、検査に5時間程度かかるため、検査の受付は、14時が最終となります。また、一日の検査を制限しており、予約が必須となります。
原則的に2~5日の禁欲期間をおいて精液検査を行います。当院では、鍵のかかる、毎回アルコール殺菌された、清潔に管理された採精室で精液を採取していただきます。
※Bコースに関しては、検査の精度に万全を期すべく、全ての方に採精室での採精をしていただいています。
目次
この検査でわかること
① 精子DNAの傷
動かない精子のほとんどは、DNAがひどく傷ついていますが、顕微鏡で見て排除できます(運動していないため容易である)。しかし、元気な精子の一部にも、DNAに数か所から数十か所の傷があるものが混じっています。このような精子が体外受精や顕微授精に使用されてしまうことがあるのです。
当院では、動いている精子にも潜んでいるDNAの傷を検査できる方法を使用しています。正確にいうと精子のDNAがスパッと切れている切断を検出できる方法です。精子を選別した後、正常な受精ができる可能性が高い、「DNAに傷が無い精子」がどのくらい確保できるのかを確認します。


② 先体反応検査(有効先体、無効先体、先体欠損の鑑別)【従来検査よりアップグレード】
先体は、ヘルメットのように精子頭部の前半分を覆う袋状の小器官です。この袋の中には、受精時に精子が卵の膜を溶かすための酵素が入っています。精子が卵の側まで泳いでいくと、ヘルメットを脱いで卵に侵入する準備を完了します。精子が自力で卵に侵入する体外受精では、運動性と先体の機能が不可欠です。先体の検査は、まず選別した精子の何%に先体がついているかを調べます。
今回、アップグレードされた検査では、1. 先体欠損、2.先体の局在は正常であるが、すでに先体反応を起こしてしまった、または先体膜が損傷している精子(無効先体)、3. 先体の局在は正常であり、先体膜に損傷がない精子、すなわち卵の側で先体反応を起こせる可能性がある精子(有効先体)に3分類します。精子の能力を判定するには、3.の有効先体精子が何%いるかが重要です。

青〇:赤く染まっていなくても、色がうすくまだらな非良好精子
当院の精子選別をすると、赤色に染まった無効先体(すでに先体反応を起こしてしまったり、先体膜が損傷している精子)は除去されます。この方の場合は、選別後、すごく良くなったが赤がまだ少し残っています。
先体に関しては、1割、2割悪くても良く、先体反応を起こして卵に入る力があるものが入ればよいので、
7割も良いものがいれば問題ありません。

青〇:赤く染まっていなくても、色がうすくまだらである場合は非良好精子
この写真は、5段階評価の下から2番目の『やや悪い』結果です。
通常、当院の精子選別をすると、赤の無効先体はほとんどなくなってしまうのですが、選別後にも関わらず、赤の無効先体がかなり多く、緑の先体もむらがある不良なものが多く含まれています。
ただ体外受精の場合には、赤の無効先体や緑のむらが多い精子の場合は、ふりかける精子の濃度を2,3倍以上にすることが推奨されます。
この検査で先体が悪いとわかれば、体外受精の時に精子の濃度を増やすことで妊娠の可能性が高まります。




分画(選別)後、廃棄部分の先体反応検査。赤色の無効先体が大半を占め、緑色のはっきりしている良好な先体もほとんどありません。当院選別の工程でこのような先体不良精子は除外されます。
③ ミトコンドリア機能検査
精子の頭部と尾部をつなぐ首の部分を中片と呼びます。この部分にはエネルギー産生に関わるミトコンドリアという器官が入っています。このミトコンドリアを染色して、中片の機能と形態を調べます。顕微授精でなかなかうまく妊娠できず、流産を繰り返したりするご夫婦は、ミトコンドリアの形態が不良のことがあります。



④ 精子耐凍能力検査
精子も卵も生ものですから、排卵当日に射精した精子しか、使うことはできません。しかし、精子濃度が低く、授精に必要な精子が足らない場合があります。選別した精子は、凍結保存液と混合して、液体窒素(-196℃)中で長期保存できます。生殖補助医療において採卵は数ヶ月に一度ですが、精液は毎週採取できます。そこで、「精子の貯金」、すなわち精子を凍結保存することにより、沢山の精子を得ることができます。ここで問題となるのは、凍結精子を融解したとき、運動性を失う精子の割合に個人差があることです。そこで、精子がどのくらい凍結保存に耐えられるかを、あらかじめ検査しておくことにより、凍結保存が可能か、さらに一回の授精に何回分くらいの精子を用意する必要があるか、目安を検査します。
実は、この凍結精子を融解して元気に生き返らせる方法がこれまでありませんでしたが、研究機関との長年の研究結果で「 DNAに傷がない運動精子」を選別してから凍結すると、解凍後も運動性を元気に維持している精子が多く確保できることがわかってきました。また研究の過程で、精子の細胞膜を保護して凍結融解する溶液も開発し、当院で利用できるようになりました。
これによって、選別した精子が-200℃凍結保存後にどの程度元気に泳いでいる精子が得られるかのパーセンテージを知ることができるようになりました。耐凍能が確認できる場合(4%以上が推奨値)は精子を凍結保存することが可能です。融解後に生き残った精子がたとえわずかでも、ひたすら貯金しておけば体外受精や人工授精ができる可能性があります。
※耐凍能力が低い方は、不妊治療の際に奥様の採卵日にあわせて当日採精をすることが必要になります。
なお、レディースクリニック(産婦人科)と密に連携を取りながら、当院で選別した精子を持ち込み、妊娠の成功率と安全性の両面を高めるサポートを行っています。
当クリニックの選別精子を上手に扱っていただける提携医療機関もあり、現在では、ほとんどのレディースクリニックで持ち込みが可能ですので、詳しくはご相談ください。(日本全国にある100か所以上のレディースクリニックや大学病院等の総合病院に持ち込んだ実績があります。)
⑤精子頭部細胞膜損傷の観察【新Bコース】
この検査は、DNA断片化検査とともに、最も重要な精子精密検査です。
ヒト精子頭部には、プロタミンと結合して圧縮されたDNAが収納されています。一般的な細胞と異なり、細胞膜直下にプロタミン・DNAが存在するため、細胞膜の損傷はDNAの傷害に直結します。これまで、精子が泳いでいれば頭部および尾部の細胞膜は正常であると考えられてきましたが、選別された運動精子であっても、一部は頭部の細胞膜に傷があることが明らかとなりました。
このような背景で、ヒト精子頭部細胞膜損傷の観察は、後述するDNA断片化検査と組み合わせて、精子の正常性判定を行う最も重要な検査です。
顕微授精を繰り返しても妊娠できなかったご夫婦に、精子は元気よく泳いでいるのにDNAがひどく切れているタイプの方がいます。これは、頭部の細胞膜だけが傷ついたため、運動性は保たれ、元気よく泳いでいたと考えられます。元気に動いている精子を選んでいたにもかかわらず、DNAが切れてしまっているのです。
この検査では、頭部の細胞膜に傷がある精子は赤く、傷がない精子は青く染まります。ご自身の選別精子の細胞膜が強いのか弱いのかが視覚的に一目瞭然でわかります。

青〇:精子頭部に空胞を認めるものの、細胞膜は正常な精子
こちらは、選別後精子の頭部細胞膜を染めたものです。頭部の細胞膜に傷がある精子は赤色に染まってしまいます。赤色に染まっているものは、細胞膜が切れているため外から悪いものが入るので、DNAが切れてしまいます。この方の場合、約2割程度に細胞膜損傷の赤色を認めました。
この結果と、選別後の運動率と対比します。
選別後運動率は80%でしたので、20%泳いでいないのがいると想定すると、約2割程度の細胞膜の損傷は妥当な線であり、許容水準であると考えられます。
例えば、選別後運動率が90%で、半分近い精子が赤く染まっている場合は、精子は元気よく泳いでいるのにDNAがひどく切れているタイプの可能性があります。


⑥精子頭部空胞検査(RB2染色法)【新Bコース】
これまで当院では、精子頭部の形態を観察するためにケルンエヒトロート法等の解像度の高い染色を行ってきましたが、今回のRB2染色法による頭部空胞の観察にアップグレードすることでさらに高度な解析ができるようになりました。
精子が成熟すると、精子頭部に収納されたDNAを保護しているたんぱく質がプロタミンに変わります。当院では、この精子頭部のプロタミンを青く染色する新規検査方法を導入しています。
このプロタミン染色を行うと、精子頭部が青色に染まり、頭部にある穴(空胞)が白く抜けて見えます。
現状では、精子頭部に空胞がある精子を効率よく排除できる技術はありませんが、選別後の精子に空胞が存在する割合を調べたり、またその穴の大きさを選別前後で比較検討することは非常に重要です。
顕微授精を繰り返しているのに中々うまくいかない方の画像です。選別後にもかかわらずほとんどの精子に大小の空胞がみられます。


⑦精子頭部外周形状、尾部検査【新Bコース】
これまで、頭部が楕円なら正常とされてきましたが、頭部の大きさや尾部の形状にも様々な異常があることが分かりました。この検査では精子の頭部と尾部の形状を、それぞれ見やすく特殊な染色を行い、異常がないかを精査します。
これまでの検査では、主に頭部の形状のみについて検査してきましたが、この検査では、頭部を赤く、尾部を青く染めることにより、尾部の形状も細かく観察できるようになりました。
この検査が開発されたことにより、選別後の精子であっても、尾部形態の多様な異常があることがわかりました。



「卵が先」から「精子が先」へ
2022年4月より体外受精・顕微授精が保険適応になりますが、年齢上限のある回数制限が設定されます。貴重な6回の回数制限(40歳以上は3回)をムダにしないためにも、精子の状態を詳しく知ることはとても重要です。
当院にはこれまで精液所見に問題がないと言われたにもかかわらず、顕微授精反復不成功のご夫婦が多くご来院されます。ご主人の精子の状態を詳しく調べると、様々なタイプの「隠れ精子異常」が高頻度で見つかります。
Bコースの予約~検査までの流れ
Bコースの流れ
①電話予約 完全予約制のため、必ず事前の予約が必要となります。電話でのご予約、問い合わせフォームからメールでの予約も可能です。 ※当日までに2日~5日までの禁欲期間の調整が必要になります。 ※採精が14時前になるよう予約が必要です。 ※日程によって最終受付が異なりますのでお問い合わせください。※新Bコースをご希望の場合は、新Bコースご希望の旨ご予約の際にお伝えください。 ※抗精子抗体検査を追加でご希望の場合は、2度の採精が必要になります。 |
②診 察 記載いただいた問診票を元に、医師による診察をおこないます。 |
③検体採取 院内の採精室(非常に清潔な個室です)にて、容器に採精をしていただきます。 |
④検 査 高精度精子検査Bコースは、高度な検査のため結果が判明するまで2週間かかります。当日結果診察の日時のご予約をお取りいたします。 |
⑤結果説明カウンセリング 医師より結果と治療方針の説明をおこないます。 |
費用(税込)
高精度精子検査Bコース | 165,000円 |
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- 2023年5月末まで特別価格の132,000円(税込)で検査が可能です。
- 別途初診料、結果説明時の診察料がかかります
初診料 | 5,500円 |
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診察料 | 5,500円 |
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ご不明な点がございましたらお気軽にお問合せください。
