精子をチェックする際に気をつけるべき3つのポイント
★精子のチェック(検査)にあたって気を付けたいポイント
当クリニックでは年間1000名を超える方が来院して精子検査をされています。初めて精子検査をされる方も多く、『良い状態』で精子検査に望めていない方も多く見受けられます。
では、精子検査をする上で『良い状態』とはどのような状態のことなのでしょうか？
ここでは、精子のチェック(検査)にあたって事前に準備をしておきたいポイントをいくつかご紹介します。
禁欲期間を調整する
禁欲期間とは、『射精を我慢する期間』のことを指します。
例えば射精をしてから24時間が経過すれば禁欲期間1日、48時間が経過していれば禁欲期間2日となります。
禁欲期間は精子をチェック(精子検査)をする上で非常に大切なポイントとなってきます。
精子は長くため込めばいいと思われがちですが、禁欲期間が長すぎると、精子が充填され始めてから時間が経ってしまうため射精時に酸化ストレスを受けた古い精子が多く排出される可能性があります。
古い精子が出てきてしまうと、良い運動をしている精子の数(運動率)が少なくなってしまったり、形に異常のある精子の数(奇形率)が高くなってしまう可能性が出てきてしまいます。
また、禁欲期間が短すぎる場合には、精子が十分にためこめられず、数がそのもの少なくなってしまう恐れがあります。
上記理由から精子をチェックをする際には、禁欲期間を2日～5日程度(理想は2日～3日)の間で調整することが推奨されます。せっかく貴重な時間を取って、精子のチェックをするのであれば、出来る限り理想的な状態で検査をした方がよいでしょう。
※実際に不妊治療で精子を使う場合は数よりも新鮮さが重要視されることもあるので禁欲期間を短めに設定するよう指示される場合もあるようです。
体調を万全にととのえる
どの程度の体調不良や発熱で精子所見が悪くなるといった明確なデータはありませんが、検査時の体調が精子検査の結果に影響を与えることがわかっています。
下記に1例をあげます。
精子検査結果
体調不良時
下記はある患者さんが体調不良時(風邪をひいて38度程度の発熱)に検査をした結果です。
精液量には問題がみられないものの精子濃度はかなり低く、運動率も何とか基準値といったところです。
精液所見
精液量 約3cc
精子濃度 約500万/ml
運動率 28％
3ヶ月後
前回検査時から約3ヶ月後、体調に問題がない状態で検査をした際の結果です。
精子濃度は前回検査時の約5倍となり問題無し、運動率も50%と良好な数値となっています。
精液所見
精液量 約4cc
精子濃度 約2400万/ml
運動率 50％
結果不良時の原因のすべてが体調不良とは限りませんが、このように体調が悪い時に検査をすると普段よりも結果が悪くなってしまう可能性があります。
精子のチェックをしようと思っていた時に風邪などをひいてしまった場合には、間隔をあけて体調が整ったときに検査をした方が良い結果が望める傾向にあります。
新型コロナウイルスワクチンを接種後の副反応による発熱についても、38度以上の熱が数日続く場合、もしくは39度の熱が出た場合等は、あらかじめ精子検査を受ける医療機関に状況を説明し、指示を仰いで検査に臨むことをお勧めします。
検査の前に練習を
精子のチェックをする際には専用の個室でマスターベーションをして採精をおこなうのが一般的です。密閉空間の個室で採精をするという経験はあまりないと思います。こういった環境で、採精の際に緊張してしまったりすると採精がうまくいかないことがあります。
大半の人は初めて検査をするときは緊張をするものですから不安がある方は一度練習をしておくことも一つの手かもしれません。
当クリニックの場合、可能な限り精子が新鮮な状態で検査をおこなうため院内での検査を推奨していますが、不安のある方には外部で採精をしてもらって一時間以内に持ち込んでもらうなどの対応をしています。
しっかりと確認するのであれば専門機関の受診を
実際してみるとあまり気恥ずかしさもなく簡単に終わる検査ではありますが、自身の精子検査をするということに抵抗がある方は少なくないと思います。
最近では、自宅で採精をして検体を検査機関に郵送する宅配郵送精子検査や、スマホ等で精子検査をおこなえる検査キットなどもあり、気軽に検査をすることが可能となってきています。
ただこれらの検査はスクリーニング検査としては有効と思われますが、宅配検査であれば新鮮な状態で検査を出来ないので運動率の測定が出来ない、スマホの検査では視野がうまく取れないなどの理由で結果が正確に測定できないことがある等デメリットもあります。
挙児を望むうえで精子のチェックをしたい。
このような目的で精子検査をおこなうのであれば、すべての検査項目を検査可能かつ検査結果を正確に出すことが出来る専門の機関で検査をしておくべきでしょう。