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男性不妊治療ガイド Infertility Treatment Guide

2023.07.09

体外受精をする前に質の良い精子について知ろう

生殖補助医療(体外受精、顕微授精)を何度もしたが、子供ができない・・・という場合は、いちど不妊治療の原点に戻る必要があります。原点とは何か?それは、不妊は男性と女性、両方に原因があるということです。

つまり、「卵子(女性)」だけでなく、「精子の検査方法」「精子の質(男性)」に目を向けてみましょう。ということです。

これまで、射精精液を対象として、精子検査(精子濃度、運動率、頭の形態)が行われてきました。生殖補助医療において、精液をそのまま授精に使用することはなく、精子選別を行います。
精子研究の進歩により、選別した精子であっても、さまざまな機能、形態異常が残存していることが明らかになってきました。そして最も重要な点は、それらの異常が特殊な検査でなければ、検知できないことです。

今回は質の良い精子とは何か?についてご紹介させていただきます。 

 

質の良い精子(妊娠させる能力のある精子)とは?

精子の構造エスセットクリニックの男性不妊専門医

精子は、簡単にいうと「DNA」と「中心体」と「べん毛(しっぽ)」でつくられています。べん毛は精子が前に動くためにあります。

ミトコンドリアはエネルギーを発生させます。前進するエネルギーはミトコンドリアによって決まってきます。ミトコンドリアが中間部にしっかりと存在せず、正常でない場合、運動率が悪く、受精能が低い精子となってしまい、妊娠させる力が低下してしまいます。

精子の構造2エスセットクリニックの男性不妊専門医

 

このように精子は、「頭部」「中間部」「尾部」とよばれる3つの部位が正常である事が重要です。

頭部の細胞膜がしっかりとしていないと中にある大切なDNAを守ることができず、頭部よりも丈夫な細胞膜を有する尾部が動き前進運動ができていたとしても、卵まで到達するころにはDNAが損傷してしまっているのです。

したがって、体外受精や顕微授精をする方は、選別した精子の頭部細胞膜を検査することは非常に重要になってきます。

 

質の良い精子とは?その2

質の良い精子とは、精子数、運動率、頭部形態、ミトコンドリア、DNA、頭部細胞膜など全てが基準を満たしている精子のことで、下の動画のようになります。

いかがでしょうか?たくさんの精子が元気よく動き回っているかと思います。前に進む力もあり、形もきれいです。
このように元気で「妊娠させる力がある」精子を選び出し、生殖補助医療(体外受精、顕微授精)に供するすることが不妊治療のカギといえます。

では、次の動画を見てください。


いかがでしょうか? 精子の数も少なく、運動率も少ない精子ばかりです。精子の形もわるく、精子のあたまに空胞のある精子が目立ちます。ふたつの動画をみてどう感じましたか?

もし人工受精や、顕微授精をする場合、元気のない精子を卵子と結合させてしまったら・・

あまりよい結果にならないと思うかもしれません。

 

質の良い精子とは?その3

形にこだわろう

精子はすべて同じ形をしているように感じるかもしれませんが、それは違います。
精子にも正常な形があります。したの精子をみてください。精子にはいろいろな方があり、大きさも違います。細長い精子もあれば、頭の部分が平べったい精子もいます。

奇形精子イメージ

 

正常な形ではない精子を「奇形精子」といいます。この「奇形精子」が96%以上ある場合、「奇形精子症」の可能性があります。

「頭部」の形がよくない精子は、妊娠させる力が弱いとされています。

正常な人でも、奇形精子がおおいことにおどろきますが、実際のところ正常な形をした精子が非常に少ないんです。

 

「卵が先」から「精子が先」へ

精子、性感染症について一通りの検査をうけることができます。
2022年4月より体外受精・顕微授精が保険適応になりますが、年齢上限のある回数制限が設定されます。貴重な6回の回数制限(40歳以上は3回)をムダにしないためにも、精子の状態を詳しく知ることはとても重要です。

当院にはこれまで精液所見に問題がないと言われたにもかかわらず、顕微授精反復不成功のご夫婦が多くご来院されます。ご主人の精子の状態を詳しく調べると、様々なタイプの「隠れ精子異常」が高頻度で見つかります。

精子精密検査をお勧めしたい理由


質のいい精子はどうやって作られるのか

質のよい精子はどのように作られるのでしょうか?

思春期になると、ホルモン活動が活性化します。すると、「精巣」で精子が作られるようになります。 精巣には、精子のもとになる「精祖細胞」があります。

精子の生成過程エスセットクリニックの男性不妊専門医「精祖細胞」から精子になるまでには、約80日程度かかると言われています。 日々、約5000万~1億個の精子が作られていると言われています。

「精祖細胞」は細胞分裂をすることで、同じ細胞を作り出すことができます。質の良い精子を作るには、日常生活や食生活などが大事になってきます。

日々、ストレスの多い仕事をしたり、睡眠時間が不規則だったり、暴飲暴食をしていたら、身体にもよくないし、もちろん精子を作ることにもよくはありません。

精子の数が少ない・・・年齢的に精子の数が少なくなっている・・・という方は、男性不妊専門の医師に相談することがとても大事です。

生活習慣の改善や栄養の取り方も気を付けることで、良い精子を増やすことは可能です。
精子は酸化ストレスに非常に弱いことが知られています。

抗酸化サプリメントの服用もおススメです。

 

精子の数はどれくらいなのか

精子は、一説によると1日に約5000万~1億個の精子が作られていると言われています。

精子は毎日、新しく作られ続けていきます。

卵子の元になる「原始卵胞」は、在庫が減っていくのに対して、精子の元である「精祖細胞」は分裂して作られているため、卵のようなかんじで減ることがありません。
精巣には、ある一定の期間、約10億個の精子を保存することができると言われています。

1度の射精で約1億~4億個の精子を出すことできます。

 

精子はどのくらい生きられるのか

精子の寿命は数時間といわれており、一日も生きられないといわれています。性行為をおこない膣に精子が入ると、寿命が約2~3日まで延びます(人によってはもっと長い日数生存するようです)。

妊娠したい場合、受精可能(精子が元気)な期間に性行為を行うことがとっても大事です。

タイミング法は、排卵のタイミングに合わせて性行為をおこない、妊娠をうながす方法です。タイミング法をおこなうにも、精子の寿命について知っているとよいと思います。

 

精子の数は年齢と関係があるのか

精子の数と年齢は関係あるのでしょうか?

男性の身体も、一般的に年齢とともに老化していきます。35歳を境目に、精子をつくる機能も低下していきます。精子も年齢によって劣化してしまいます。

精子は毎日作られていますが、やはり20代の方が精子の質も、運動率もよい場合が多いです。しかし、年齢が若いから全ての人に子供ができやすいのか?と言われてしまうと、そうとも言い切れません。

実は、20代で不妊治療を受ける人が少しずつ増えています。食生活やストレスなどが原因している可能性があります。妊活をする場合は、年齢が早ければ早いほど、子供は作りやすいといえます。

不妊治療を受けるのは・・・という方は、精子の検査だけでも受けてみるといいかもしれません。

 

精子の質についてまとめ

いかがでしたか?精子の質、質の良い精子とは?何か?について少しお分かりいただけたかもしれません。

男性不妊の基本は、精子について知ることです。
たかが精子、されど精子。

質の良い精子は、生活環境や、年齢、先天性の病気など様々な要因があります。自分では判断できないこともあるかもしれません。とくに、顕微授精や体外受精、人工授精を考えている場合、いかによい精子を選ぶか?は大事になってきます。不妊についてお悩みの場合、ぜひ、精子検査についても勉強をするようにしてみてください。

 

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