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精液中に精子が認められない無精子症、本当に無精子症かどうかは精液検査をおこなわないとわかりません。
ここでは無精子症の方に共通してみられることの多い項目を紹介します。(あてはまったら必ず無精子というわけでは限りません。)
精子の検査はしたことがあっても精巣の検査はしたことがない、という方が多いと思いますが、精子が悪いといわれた方や、これから精子の検査を考えている方は、一緒に超音波検査もしておいた方がいいでしょう。
✅不妊期間が1年以上ある
✅精巣のサイズが小さい(枝豆くらいかそれ以下)。長い部分の径が3㎝程度が正常で、1㎝またはそれ以下の場合には小さいとされます。
✅過去に性病にかかったことがある
✅鼠経ヘルニア手術を受けた既往がある
✅陰嚢にこぶのようなものがある
上記チェックポイントに複数あてはまるようであれば、無精子はじめ男性側に何かしらの原因がある可能性があります。専門機関を受診して問題がないかきっちり確認することをおすすめします。
無精子であるかどうかは精液検査で確認します。
精液検査にはいくつかの種類があり、機械での測定やスマホ等で行なう検査では、正確に精子の様子を検査できていないことがあります。精子がたくさんいれば安心でしょうが、精子が少ない場合は、極端に精度が落ちます。精液検査の専門機関で、経験豊富な臨床検査技師による顕微鏡でのeye count が一番正確です。特に精液中に精子が存在しない(無精子症)のか、極端に少ないがわずかに存在するのか、は大きな違いです。 さらに当クリニックでは、顕微鏡にて無精子症に見える場合でも、精液を遠心して濃縮することで精子を確認したり、プロタミン(精子だけに存在するタンパク質) という物質を青色に染色して精子の一部を捕捉する、などの技術を用いて、本当に精巣内で精子が造られているか、いないか、まで調べます。つまり、精子の存在または精子の一部が観察された場合には、自然妊娠は無理でも精巣内精子採取術(TESE)にて精子回収の可能性が高まります。言い換えるとBabyへの道筋が途切れていないことを意味します。TESEに踏み切るかどうかで、悩まれているご夫婦(特に男性)にはお勧めです。
精液検査では、精子が存在するか、しないか、だけしかわかりません。無精子症検査では「無精子の原因は何か」を突き止める、精液検査以外の検査が非常に重要になります。
男性不妊初診セットとは、精液検査、血液検査(ホルモン検査等)、尿検査、精巣の触診・超音波検査をまとめて行なうセット検査です。
精液検査は、前述の通り、精密に精子の有無を確認します。
血液検査は、健診や人間ドックで行なうような検査項目をあらためてチェックします。特に脂質代謝を中心とした「メタボリックシンドローム」についてチェックします。さらに重要な検査項目はホルモン値です。特に脳下垂体ホルモン(LH,FSH)が原因診断の有力な手がかりになります。また、男性ホルモンがきちんと分泌されているかの確認も重要です。
尿検査は、健診や人間ドックで行なうものは主として、尿一般検査という内容で、試験紙で尿糖、尿蛋白、尿潜血反応を見るもので簡便な検査です。泌尿器科では、尿沈渣といって、尿を遠心して、赤血球(血尿)と白血球(膿尿)などの細胞成分を顕微鏡で調べる検査です。手間をかけた精度高い検査です。この検査で問題があれば、それは尿の通り道(尿路)のトラブルであり、男性は精子の通り道でもあるので、尿の問題が精子のダメージ(破壊)につながっている可能性があり、重要な検査です。
そして精巣の触診と超音波エコー検査です。精巣は、男性ホルモンと精子を造っている場所です。二種類の細胞が分業して造っています。チェック項目はサイズ、内部の様子のチェック、精索静脈瘤の評価、の3点です。
1⃣サイズ
セルフチェックの項でお示しした通り、長径が3cm(体積で20㎤前後)が正常ですが、長径が1cm以下(体積で10㎤以下)は精子を造る能力(造精機能)が低いことが懸念されます。触診による推定とエコーによる計測を行ないます。
2⃣内部の様子
エコーで検査します。正常な精巣の内部は中身が密に満たされて、均一なエコー像に見えます。造精機能が低い場合、中身が石灰化していたり、血流が悪く黒ずんで見えます。
3⃣精索静脈瘤の有無
生まれつきのもので、静脈が精巣の上部にらせん状に乗っており、静脈血がそこをゆっくり流れていて、精巣周囲の温度を上昇させて、冷涼な温度を好む精巣に負担をかけている状態です。触診とエコーで、診断し、瘤の大中小で評価します。もちろん大きい方が重症です。元々の造精機能障害のさらに足を引っ張る要因です。
上記項目を総合的に判断して、精子の通り道が詰まって通行止めになっている『閉塞性無精子症』、精巣で精子を造っていないあるいは極めてわずかしか造っていない『非閉塞性無精子症』、さらに青色の染色で精子の一部が染まる『精子の破壊亢進による無精子症』かの確定診断に至ります。
無精子症の確定診断後は染色体検査に進むのが一般的です。
特定の染色体異常があると造精機能が著しく低くなってしまったり、場合によっては精子を全く造れなくなったりします。2種類の検査があります。G-band法とAZF検査です。
G-band法:両親から受け継いだ染色体は23対46本あります。これに不足や過剰がないか、ある染色体の一部がちぎれて別の染色体にくっついている転座などを調べます。男女を決める性染色体(男性XY、女性XX)が3本あり、XXYの構成になっているクラインフェルター症候群が有名で頻度が高いです。
AZF検査:男性のみにあるX染色体の上に精子に関する遺伝情報(つまり父親から引き継いだもの)は3か所に分かれて書き込まれており、それぞれAZF-a、AZF-b、AZF-cと名付けられています。このいずれかに書き込みの抜け(欠失)がないかを調べます。AZF-a、AZF-bのいずれかに欠失がある場合は精巣内で精子が造られていない可能性が高くなります。AZF-cのみの欠失の場合は精巣内で精子が造られている可能性が高くなります。この2種類の結果から、精巣内精子採取術(TESE)で精子を採取できる可能性を予測します。そのうえで、熟練した医師が執刀して精子を造っているチューブ(精細管)を特定し、精子の探索を行ないます。
※TESEは精巣の中身を削りながら、精子を探索する手術ですので、術後に男性ホルモンを分泌する細胞も削られて男性ホルモン分泌が不足して「男性更年期障害」と同様の状態(気力、体力、集中力の低下)になるリスクがあります。生涯男性ホルモンの補充療法が必要となることがあります。
※TESEに進むかどうかについては、諸検査の結果とお二人のご意向及び精子採取の可能性に上記のリスクを勘案して決定することになります。
受精能力のある精子(卵子の相手がつとまる精子)は射精精子全体の中の一握りの精子です。土の中の砂金のようなものです。「精子なんてたくさんいるんだから、何回かの行為で精子のどれかが、卵子にたどりつけば妊娠するんじゃないか。」と思いがちですが、そうではなく「一握りのエリート精子のために、ダメもとで大量の精子を提供している。」という解釈が正しいのです。
精子は一握りの勝者を決めるトーナメントを毎回繰り広げていることになります。実力に運も必要です。卵子の立場から言えば、高いクオリティの赤ちゃんをこの世にもたらすというミッションを達成するためには、一握りのエリート精子とだけ受精を成立させるということになります。つまり妥協のない精子選別を体内で行っているのです。
したがって普通に妊娠することがそもそも奇跡的な事象なのです。
男性不妊に対する正しい知識を身に着けて早期の妊娠を目指しましょう。
監修医師 中條 弘隆 |
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エス・セットクリニック院長 男性不妊外来を担当 精子精密検査ができる国内初の男性不妊専門医院であるエス・セットクリニックが2012年に開院した当初より参画し、 延べ8000人以上の男性不妊診療に従事してきた。 日本泌尿器科学会専門医。
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