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精液検査で、全く精子が確認できない場合、「無精子症」が疑われます。通常は精液中に確認できない場合は、遠心機で濃縮して精子がいないか確認します。二度の精液検査を受けて、それでも確認できない場合には、「無精子症」と診断されます。
意外かもしれませんが、日本人男性の約100人に1人は無精子症といわれており、実はけっこう多い病気なのです。実際に男性不妊症外来に来られる方の、10~15人に1人に無精子症が見つかります。
今回は、無精子症の原因とその対処法について知っていただこうと思います。
「無精子症」は、男性不妊の代表的な原因である精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)のように、自己診断できる症状がないため、精子検査を受けてみないと自分ではわかりません。「無精子症」と診断されると自然妊娠は不可能になります。ただ、無精子症のタイプによっては、治療次第では妊娠が可能なものがあるのです。
「無精子症」は閉塞性と非閉塞性の大きく2種類に分類されます。その分類は検査結果だけで判断することは難しい場合もあり、男性不妊を専門とする泌尿器科医の診断が必要になります。どちらかの種類によって治療方法が異なります。
閉塞性無精子症 | 非閉塞性無精子症 | |
症状 | 精子は作られている。何らかの理由で精子の通り道が閉塞している。 | 精子を作る力が衰えている。 |
睾丸 | 大きさ、硬さは正常 | 萎縮して縮小傾向・やわらかい |
精巣上体 | 腫大あり | 膨大なし |
FSH(ホルモン検査値) | 正常 | 10以上 |
射精した精液に、精子がみつからなかった場合、期間をおいて精子検査を再検査します。
再検査でも精子が見つからない場合、ホルモン検査を行い、睾丸に指令をだし、精子の形成を促すホルモンであるFSH(Follicle Stimulating Hormone:卵胞刺激ホルモン)の数値や睾丸の大きさを超音波で調べ、閉塞性無精子症か非閉塞性無精子症かどうかについて見極めることになります。
よくあることが、一回の精子検査で「無精子症」と決めてしまうことです。
しばらく期間をおいて、禁欲期間(きんよくきかん)を長めにとって調べることで、わずかながら精子が見つかることもあるのです。
「無精子症」と診断されると自然妊娠はほぼ不可能になります。ただ、無精子症のタイプによっては、治療次第では妊娠が可能なものがあります。
閉塞性無精子症は、精巣で精子は作られているが、精子の通り道が何らかの理由で通過障害を起こしている状態です。よくある原因には、過去の性感染症による精巣炎、子供の頃に鼠径ヘルニアの手術後の精管閉塞などがあります。
「閉塞性」の場合、精子の通り道を開通させる「精路再建手術」で、精子が得られる可能性があります。その場合、女性側に問題がなければ、自然妊娠できることもあります。
また精路再建できなかったとしても、精子は精巣で作れているため、simple-TESEまたはMD-TESEによって精巣から精子を採取し、顕微授精による妊娠の可能性が十分にあります。
非閉塞性無精子症の場合、精管に閉塞がなく、射精した精液に、精子がまったく見られない状態をいいます。よくある原因には、成人になってからのおたふくかぜによる精巣炎、染色体異常(クラインフェルター症候群)、原因不明の造精機能障害などがあります。
ホルモン異常が原因の場合には、ホルモンを上げる薬をある一定期間投与することで、精子が精液中に出現することがあります。
また、重度の精索静脈瘤がある場合には、精索静脈瘤の手術を行うことでわずかな精子が出現したり、そのあとに行うmicro-TESEの精子回収成功率が向上するという報告もあるため、ご夫婦の年齢等を勘案して手術をするかを慎重に判断します。
非閉塞性の場合でも、精巣の一部でわずかでも精子を作っていることが確認されれば、精子を得られる可能性があります。通常、非閉塞性無精子症の手術は、精巣の中を顕微鏡下で確認しながら、精子がいそうな(太く白濁している)精細管という精子を作っている管を取り出す、顕微鏡下精巣内精子採取術(Micro-TESE)が一般的になっています。
当クリニックでも、非閉塞性無精子症に対する、日帰り顕微鏡下精巣精子採取(Micro-TESE)を行っています。
繰り返しになりますが、無精子症と決めつける前に、必ず精液検査は複数回受けるようにしましょう。