精子の基準値について
男性不妊はほとんどが精子に関する問題であるため、男性不妊の検査はまず精液検査から始まります。ではどの程度の結果であればよいのでしょうか?
精液検査の結果(精液所見)には基準値があります。
この基準値を満たせば自然妊娠が期待できる!とはなりませんが、各項目において基準値以下だと男性不妊専門の病院の受診をすすめられたり、再度検査をすることをすすめられます。
ここでは、精液所見の基準値についてお話しをします。
目次
精液量(volume)
基準値 :1.4ml以上
精液量は、射出された精液の量です。精液量の正常値は1.4ml以上とされています。
1ml以下の場合には逆行性射精という症状が疑われます。この症状の場合には、射精した後の尿が白くにごっていたり、射精後に尿と一緒にドロドロしたものが出てくることがあるようです。
この場合、出てくる精液の量や精液に含まれている精子の量(精子濃度)や質(精子運動性・正常形態率)にもよりますが、パートナーを妊娠させる可能性は限りなく低くなります。
糖尿病や前立腺肥大の薬が原因で逆行性射精になることもあるようです。赤ちゃんが欲しいご夫婦の場合、精液量が少なかったり、その症状が疑われる場合には男性不妊の専門病院にかかることをおススメします。
精子濃度(consentration)
基準値 :1mlあたり 1.6×10⁶ 匹(1600万匹/ml)以上
精子濃度は、精液1mlあたりに含まれている精子の個数です。
1600万個が基準値とされこの値を下回ると乏精子症(ぼうせいししょう)と診断されます。
精液の中にどれくらい精子が含まれているかは肉眼ではわからないため、知るには検査が必要となってきます。
濃度約6000万匹/ml(基準値以上):実際に自然妊娠された方の精子動画
濃度約700万匹/ml(乏精子症)
総精子数(count)
基準値 :3.9×10⁶匹(3900万匹)以上
精液中に含まれる全精子数です。
精液量×精子濃度
で算出されます。
基準値は3900万個とされていますが、健常男性であれば総精子数は1億~となるようです。
運動率(motility)
基準値 :42%以上
運動している精子の割合です。
基準値である42%を下回ると精子無力症と診断され、動いている精子がほとんど認められない場合には精子死滅症と診断されます。
自然妊娠を希望する場合には、運動率55%以上ある方が望ましいと言われています。
精液検査の検査項目の中でも重要視される項目で、精索静脈瘤などの疾患がみられる方は運動率が低くなる傾向があります。
注意点として、見かけの運動率が高くてもその場をくるくる回っているだけであったり、高速直進をする精子が少ない場合には妊娠にたどり着く可能性が低くなると考えられます。
運動している精子の良し悪しはセルフチェックが非常に難しいので、精子検査をたくさん行っている病院で、専門家に確認をしてもらうことをおすすめします。
正常形態率(normal form)
基準値 :4%以上
正常形態率は、形が正常な精子の割合です。精子奇形率(形が悪い精子の割合)が表現としてつかわれることもあります。
奇形精子と聞くと怖い、生まれてくる子供に影響があるのではないか?と思うかもしれませんが、精子の奇形率と生まれてくる子供の先天性異常の因果関係は指摘されていません。
ただ、奇形精子は妊娠を目指すにあたって重要なポイントとなります。奇形精子は受精しない精子のため、正常形態率が低いと不妊の原因となりえることがわかっています。
奇形精子が多くなってしまう原因としては、精索静脈瘤による精巣環境の悪化(周囲の温度が高い)や喫煙習慣などの生活習慣があるとされています。


以上が精子所見で判断される精子の基準値です。
精液検査をした際に基準値を下回るようであれば、専門機関を受診してきちんとした精液検査をおこなったり、異常の原因となることが無いかを調べることをおすすめします。ただし精子所見は日ごとに結果にばらつきが出ることがわかっているので、複数回の精子検査を受けることをおすすめします。
逆に結果が基準値を超えていたとしても、あくまで基準値なのでこの数値を超えていれば妊娠できるとは一概にはいいきれませんが、一つの目安にはなりますので参考にしていただけると幸いです。
精子の質とは?
精子に問題が無く、妻にも異常が無いのになかなか妊娠しない…
このような悩みを抱えて来院されるご夫婦が多くいらっしゃいます。
今まで精子に問題がないと言われていた方でも男性側の不妊原因の研究が進むにつれて、今までの精液検査だけでは判断できなかった様々な異常を見つけられるようになりました。
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