体外受精の成功率とは
日本産科婦人科学会の調査によると、2018年の胚移植1回あたりの妊娠率は31.9%でした。
この年の総出生数918,400人のうち体外受精で生まれた子どもは56,979人、16人に1人が体外受精で生まれているということです。
一見、体外受精をすればほとんどの人が妊娠・出産できるのでは？と感じてしまう数値ですが、実は体外受精は年齢によって成功率が変わります。
体外受精の年齢別妊娠率・出産率・流産率
体外受精の妊娠率を年齢別に見てみると、34歳以下と40歳以上では成功率に大きな差があります。実際に34歳以下で体外受精を行った場合の妊娠率は、日本産科婦人科学会の全国統計では胚移植あたり40％以上であるのに対し、40～44歳では10％台～20％台、45歳以上では数％という結果です。
流産率も年齢の影響を強く受けていることが確認できます。
体外受精の年齢別成功率
年齢別に体外受精の成功率をパーセンテージで説明します。
・25歳~29歳 約40%以上
体外受精の最も高い成功率でも半分は満たないことがわかります。
・30歳~34歳 約35%~40%
少し成功率が下がりますが、全体で比較するとまだ成功率は高いと言えます。
・35歳~39歳 約25%~30%
この年代から卵子の質が下がると言われているため、妊娠できる可能性も下がります。
・40歳~44歳 約10%~20%
この年代は卵子を採取できない可能性があります。卵子が採取できなければ体外受精もできません。
・45歳~49歳 約5%未満
卵子が採取できない、卵子が育たない等の理由で体外受精ができない可能性が高まります。
体外受精は何回目で成功するのか
1回の体外受精で妊娠する確率は20％程度です。何回目で妊娠されるかは個人差があり、1回で妊娠できたという人もいれば、40代など年齢を重ねた方は7～8回という例もあります。妊娠の可能性が高まるのは、不妊治療の統計からいうと最初の4回までです。5回以上繰り返しても妊娠に至らないという場合には、子宮、卵子・精子に何らかの問題を抱えている可能性が考えられます。
体外受精を繰り返すデメリット
身体への負担が大きなデメリットと言えます。卵巣や子宮壁に針を刺さなければならず、体外受精で使用する薬の副作用も身体へ負担を与える場合があります。
また、費用の負担も考えなければなりません。43歳未満は保険適用で体外受精を実施できますが、回数に制限があります。
体外受精がうまくいかない原因
体外受精がうまくいかない原因は卵子の問題だけではありません。精子が原因である可能性もあります。
当院では精子検査の重要性を発信しています。当院の高精度精子検査Bコースでは体外受精や顕微授精に使用できるレベルにまで選別した運動精子のＤＮＡが損傷している度合い、頭部の細胞膜の状態、先体反応誘起能等7項目の検査を行い、「精子の実力」を徹底的に調べます。
体外受精や顕微授精への使用に値する良好な精子がどの程度の量確保できるかどうか、またそれらの精子群の質が妊娠可能なレベルにあるかを確認し、現時点での体外受精等の成功率を男性側から評価します。
体外受精の成功率を高めるために
Bコースの結果、顕微授精での成功率を高めるため、良好な精子を選別し使用することを推奨しています。精子１匹を卵子に注入する顕微授精は最も合理的な方法です。ただ、母子ともに安全かつ健康な妊娠のためには、卵子に自力でたどり着ける精子と同品質の精子が求められます。
本来であれば女性の体内で自然に行われるレベルの精子選別を、人の手で代行する必要が出てきます。当院では、自然淘汰を人工的に代行し、淘汰を乗り越えた運動精子に選り分け、レディースクリニックに持ち込めるように処理します。選別精子に耐凍性があれば、精子が少なくても、良好精子の「精子の貯金」をし、ARTに臨むことも可能です。
まとめ
体外受精の成功率は年齢によって大きく差があります。そのため、限られている時間を有意義に使わなければなりません。
体外受精・顕微授精をしているがなかなかうまくいかない方はもちろん、これから体外受精を始めようと考えている方も、まずは「精子の質・実力」を調べてみることをお勧めします。精子の質をしっかりと把握した上でご夫婦に合った治療を進めていきましょう。
当院では精子検査の重要性や不妊治療について、月に1度勉強会を開催しております。勉強会では先述した高精度精子検査Bコースや精子選別についても詳しく説明がございます。体外受精・顕微授精の成功率を高めたいご夫婦にはご参加をお勧めしております。