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不妊治療というと、「女性に問題がある」、「女性の年齢が問題なのでは?」という認識の男性がいまだに多いかもしれませんが、不妊の原因は、実は男性側にもあります。
慶応義塾大学病院産婦人科における、不妊夫婦5000組の原因調査の結果によると、男性不妊が約48%を占めるという報告がされています。
左のグラフを見ても分かるように、不妊の原因は男性のみが約24%、夫婦両方である場合が約24%あります。つまり、子供ができない場合、半分は男性にも原因があるのです。不妊は女性だけの問題ではありません。
日本は晩婚化がすすみ、結婚する年齢が上がっています。
すると必然的に、子供を作る平均年齢も上がってしまいます。しかしながら、女性が子供を産める年齢などはそれほど変化していません。
人によって差がありますが、男性も女性も35歳を過ぎる頃から、加齢による問題がふえることから子供ができる確率が減っていきます。
不妊治療を受ける場合は、「男性不妊」というキーワードを知っている事がとても大切になります。
まだ検査を受けるかどうか決めきれないご夫婦へ
男性不妊の種類として、「造精機能障害」「精路通過障害」「性機能障害」「副性器機能障害」などがあり、これらが精子の問題「乏精子症」「精子無力症」「奇形精子症」「無精子症」などを引き起こす原因となってしまうことがあります。
症状によって治療する内容や対処方法が変わってきます。
精液検査で、全く精子が確認できない場合、「無精子症」が疑われます。
無精子症は閉塞性と非閉塞性の大きく2種類に分類されます。
「閉塞性無精子症」は精巣で精子は作られているが、精子の通り道が何らかの理由で通過障害を起こしている状態です。よくある原因には、過去の性感染症による精巣上体炎、子供の頃に鼠径ヘルニアの手術後の精管閉塞などがあります。
閉塞性無精子症の場合、精子の通り道を開通させる「精路再建手術」で、精子が得られる可能性があります。その場合、女性側に問題がなければ、自然妊娠できることもあります。また精路再建できなかったとしても、精子は精巣で作れているため、simple-TESEまたはMD-TESEによって精巣から精子を採取し、顕微授精による妊娠の可能性が十分にあります。
「非閉塞性無精子症」は精管に閉塞がなく、射精した精液に、精子がまったく見られない状態をいいます。よくある原因には、成人になってからのおたふくかぜによる精巣炎、染色体異常(クラインフェルター症候群)、原因不明の造精機能障害などがあります。
ホルモン異常が原因の場合には、ホルモンを上げる薬をある一定期間投与することで、精子が精液中に出現することがあります。また、重度の精索静脈瘤がある場合には、精索静脈瘤の手術を行うことでわずかな精子が出現したり、そのあとに行うmicro-TESEの精子回収成功率が向上するという報告もあるため、ご夫婦の年齢等を勘案して手術をするかを慎重に判断します。
非閉塞性無精子症の場合でも、精巣の一部でわずかでも精子を作っていることが確認されれば、精子を得られる可能性があります。通常、非閉塞性無精子症の手術は、精巣の中を顕微鏡下で確認しながら、精子がいそうな(太く白濁している)精細管という精子を作っている管を取り出す、顕微鏡下精巣内精子採取術(Micro-TESE)が一般的になっています。
何らかの原因で射精ができない状況のことです。あるいは精液が出ない、タイミングよく射精できない状況のことです。射精障害にはいくつか種類があります。
「無射精症」・・・オーガズムに達しない状態(交感神経が損傷するとこの症状が出やすくなります。)
「逆行性射精」・・・射精時に膀胱側へ射精してしまう症状
「早漏」・・・射精するのが早すぎる症状
「遅漏」・・・射精までの時間がかかる状況
「膣内射精障害」・・・マスターベーションでは射精が出来るが、性交になると射精ができない症状
心因性の射精障害は、じわじわと男女共に精神を削っていきます。原因不明の射精障害の場合は、気持ちが落ち込んでいたりするので、医師に相談してみるのも一つの手です。
男性不妊の原因は様々あります。精子が通過する場所に問題がある場合、精子を作るのに問題がある場合、勃起ができなくなったり、精神的な問題でセックスレスになってしまう・・・など男性不妊の原因は様々あります。
自分の不妊については、友人や家族などに相談しづらいデリケートな問題でもあります。そのため、他人であっても、医師のような専門的な第三者に話を聞いてもらう事が、かえって効果的である場合があります。経験豊富な専門の医師に相談すると改善策が見つかり、克服できることがあります。
しかしながら、医師との相性もあるので、一概にだれに相談したらいいのか?という判断が難しいところでもあります。
話を戻し、男性不妊の中で、最も多いものは「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」という病状です。あまり聞きなれない言葉かもしれません。
精巣に静脈瘤ができてしまい、血流が悪くなることがきっかけで精子の質が低下してしまうのです。
精索静脈瘤は男性不妊の大きな原因となっています。問題なのが、よほどひどくならない限りは痛みなどがなくので、病気の発見が遅れてしまうことです。
精子がうまく作られていない。精子の運動率が悪いなどの症状がある場合、一度は精索静脈瘤の可能性を疑ってみましょう。自己判断は難しいところですが、以下の症状にあてはまる方は精索静脈瘤がある可能性があり、是非ご確認いただければと思います。
・陰嚢サイズに左右差がある。(左が小さい)
・陰嚢の表面にしわがより、でこぼこしているような感じがする
・長時間座位または立位を続けた後に陰嚢にたまに痛みを感じる
・陰嚢の表面を触るとぷよぷよとしたこぶのようなものを感じる(かなり重症の場合があります)
男性不妊検査として代表的な検査を紹介していきます。男性不妊検査は大きく分けて『精液検査』と『精液以外の検査』に分かれます。
男性不妊の原因のほとんどは精子の問題であるため、まず最初におこなう男性不妊検査は精子検査となることが一般的です。
精子検査といっても自宅で採精して郵送するものから、病院で採精検査をおこなうものまで色々あります。
挙児を望み、ご自身の精子について詳細に知りたいと考えるのであれば、専門の医療機関で検査することをおすすめします。
・ホルモン検査
・精巣の超音波検査
これらの検査は、検査結果から正確な診断をおこなうのに医師の経験が必要とされるため、男性不妊専門の機関で検査をすることが推奨されます。
特に男性不妊の代表的な原因である精索静脈瘤は超音波検査で診断されます。この精索静脈瘤は、医師による手術の必要性の有無の判断が必要とされます。
ホルモンの値がよくない際に処方される薬についても経験のある医師が状態をしっかりと把握しながら、薬の飲み方を指定する必要があります。
精子検査で結果が悪いといわれた方でも専門機関を受診することで治療可能な原因がみつかることも少なくありません。
男性不妊の検査は、大きく分けて精子の検査と精子以外の泌尿器科的な検査に分けられます。
精子の検査のみであれば、郵送検査、レディースクリニックでの検査などいろんなところでおこなえますが、精子について詳細に知ることのできる検査をおこなえる機関の数は限られます。
男性不妊専門医の数が少ないことから、泌尿器科的な男性不妊の検査をおこなえる機関の数も限られています。
精子検査で結果が悪かったため専門機関を受診するという流れが多く見られますが、違う病院を探す、再び検査をするなどと、時間的、費用的にも遠回りとなってしまいます。
不妊が疑われる場合にはまず男性不妊の専門機関を受診することで正確な診断、今後の方針などを判断してもらうとよいでしょう。
男性不妊と言われてもどんな治療をするのか?わからない人も多いかと思います。
男性不妊の治療は、ホルモンの薬による治療、漢方、サプリメント、医師の診察、精索静脈瘤などの手術など様々あります。
どれを選んだらいいのか?については判断が難しいため、医師に相談するのがよいとされています。
しかし、自分で情報を集めて比較し、どんな治療をしたらいいのか?ある程度自分で納得することが大事です。
なぜなら、セックスレスなど精神的な問題からくる「勃起障害」については医師でも対処が難しい部分があります。「やる気がおきないので、勃起しない・・・」というのは本人しか解決ができないため、男性ホルモンをあげる薬をのんだり、性機能を根本的に底上げするような治療もありますので、男性不妊を専門とする医師に相談することをおススメします。
不妊治療は、男性も前向きになることがとても大切です。
受精能力のある精子(卵子の相手がつとまる精子)は射精精子全体の中の一握りの精子です。土の中の砂金のようなものです。「精子なんてたくさんいるんだから、何回かの行為で精子のどれかが、卵子にたどりつけば妊娠するんじゃないか。」と思いがちですが、そうではなく「一握りのエリート精子のために、ダメもとで大量の精子を提供している。」という解釈が正しいのです。
精子は一握りの勝者を決めるトーナメントを毎回繰り広げていることになります。実力に運も必要です。卵子の立場から言えば、高いクオリティの赤ちゃんをこの世にもたらすというミッションを達成するためには、一握りのエリート精子とだけ受精を成立させるということになります。つまり妥協のない精子選別を体内で行っているのです。
したがって普通に妊娠することがそもそも奇跡的な事象なのです。
男性不妊に対する正しい知識を身に着けて早期の妊娠を目指しましょう。
監修医師 中條 弘隆 |
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エス・セットクリニック院長 男性不妊外来を担当 精子精密検査ができる国内初の男性不妊専門医院であるエス・セットクリニックが2012年に開院した当初より参画し、 延べ8000人以上の男性不妊診療に従事してきた。 日本泌尿器科学会専門医。
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